社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

ITエンジニアの分類(会社による違い)

ITエンジニアを会社による違いで分類すると、事業会社のIT部門(社内SE)、ユーザー系IT企業、Sierに分類できます(私はユーザー系IT企業から社内SEに転職)。

「事業会社」とは、ここではIT以外をビジネスにしている会社を指します。IT企業もITを事業にしている事業会社ですが、IT業界では「事業会社」というと、IT以外を事業にしていてシステム構築を依頼する発注者のことを指します。

この事業会社が大きくなって、IT部門を別会社化すると、ユーザー系IT企業が誕生します。事業会社の子会社になっている場合もあれば、もっと巨大なグループだと、この事業会社が母体となるホールディングス直下の子会社になっている場合もあります。

ユーザー系IT企業がある場合には、事業会社は自分の子会社であるユーザー系IT企業にシステム構築を発注し、ユーザー系IT企業がSier(ベンダーとも言う)に発注をします。さらに大手Sierだと自分の子会社に発注したり、さらにその子会社も中小のソフトウェアベンダーに発注したり、といった感じで、システムの規模が大きくなるほど多重構造になっていきます。そして、それぞれの会社でシステム構築の役割が変わるので、そこに所属するSEにも求められるスキルが変わってきます。

システム構築の流れでざっくりした役割分担を説明すると、システム企画を社内SEがやって、要求定義(業務要件定義)を社内SEとIT子会社(ユーザー系IT企業)が共同でやって、それをもとにIT子会社がRFPを作成。複数のSierが提案書を作って、社内SEとIT子会社が共同でベンダー(Sier)選定。ベンダーが決まると、要件定義をベンダーがリードをして実施。要件定義でのユーザー部門との調整はIT子会社の役割で、IT子会社で調整ができない場合には、社内SEにエスカレーション。要件が確定した後は、基本設計から総合テストまではベンダーが実施して、IT子会社がレビュー。総合テストが終わるとIT子会社が受入テストをやって、OKならユーザー部門がIT子会社のサポートを受けながら受入テスト、そしてIT子会社がリリース、といった感じです。

①事業会社のIT部門(社内SE)

社内SEの「建前上」の役割は、IT戦略やシステム企画です。でもそれらをきちんとやっている社内SEは少なく、ユーザー部門の御用聞きになっている場合が多いです。またITに詳しくない人が多いことも特徴です。本当はユーザー部門で働くために入社したのに、いろいろな事情でIT部門に異動してきた人たちです。いつまでもITの仕事に慣れない人もいれば、IT企業のエンジニア顔負けのIT知識がある人もいて、千差万別です。

発注者でもあるので、発注前に費用対効果を算出したり、システム構築時に経営層やユーザー部門と様々な調整をするのは、社内SEの重要な役割です。

IT企業のエンジニアからすると、ITの仕事の頂点に君臨する人たちなので、この社内SEへの転職はとても競争率が高いです。その頂点も、中に入るとピラミッド構造になっているのですが。サラリーマンですから・・・。

ワークライフバランスを重視したい、超上流工程に携わりたい、といったITエンジニアが社内SEを目指します。

②ユーザー系IT企業

事業会社の情報システム部門が独立して発足した経緯を持ちます。ユーザー部門との関係を強化するために、事業会社から出向してきている人たちもいます。逆に事業会社の業務を知るために、事業会社に出向する場合もあります。

 いずれにしても「事業会社の業務を知っている」ということが、最大の存在価値であると言えるIT企業です。

事業会社とSierとの間に立つので、発注者としての顔とシステム構築の元請けの顔と2つの顔を持ちます。また構築したシステムの運用や保守もIT子会社の重要な役割なので、よほど大きいプロジェクト以外は、システム構築をしながら保守も兼務する場合が多いです。そのため一つの仕事に集中できることが少なく、目の前の仕事に忙殺されがちになります。システム障害も真っ先に連絡が来るのがIT子会社のエンジニアなので、夜間や休日でも常にシステム障害に対応できることが期待されます。

大変である反面、IT企業の中では一番ユーザーに近い立場にいるので、ユーザーに信頼されるようになると、とてもやりがいを感じることが出来ます。

Sier

ベンダーとも呼ばれます。いわゆるシステムエンジニアと言った時に、一般の人がイメージするのはSierの仕事です。

が、今はSierの仕事も多岐に渡っていて、さらにはDX、IoT、AIなど、今までのITとは異なる領域のITがビジネスで求められるようになってきています。良く言えば選択肢が豊富、悪く言えばあっという間に時代に取り残される、厳しい世界に身を置いています。

とは言っても、まだまだ従来のSIの仕事が多いのも現状です。大部分のエンジニアは、決まった事業会社の仕事を長く続けます。IT部門が弱い事業会社の仕事を受注している場合には、ユーザー系IT企業のような役割をこなすこともあります。

Sierも階層化されているので、元請けになるような大企業の場合には、自分たちでシステムを作ることはなく、下請けベンダーの管理と発注企業への進捗報告等が主な仕事になります。大きなプロジェクトを自分の手で動かしたい人には向いていますが、自分で物作りをしたい人には、規模の小さい会社の方が向いています。 

社員数が数名から100名程度のIT企業は非常に多く、それらの会社はメーカー系の大手Sierに対して、ソフトウェアベンダーと呼ばれることもあります。独立して起業する人たちも、これらの会社に所属する人たちが多いです。

また今はITコンサルもSierの仕事を受けるようになってきていて、ITコンサルとSierの境界が曖昧になってきています。

収入面でいえば、ITエンジニアの中では、Sier一番高収入を得る可能性を秘めています。(ITコンサルは、ここではITエンジニアに含めていない)

独断と偏見でいえば、給与の高さは

大手Sier > 社内SE > ユーザー系IT企業 > 並のSier

といった感じです。事業会社は金融業を除けば、CIOと言えどもそれほど給与は高くありません。大手Sierの事業部長クラスになると、たいていの事業会社の社長よりも給与が高いです。ユーザー系IT企業は構造的に親会社よりも給与は高くなりません。でも親会社の給与に準じているので(IT子会社の部長は親会社の課長に相当)、大多数のSierよりは給与が高いです。

【振り返り】

ざっと以下の分類の②についてご説明しましたが、イメージが湧いたでしょうか?

次回は②−1について、もっと詳しくご紹介していきたいと思います。

①スキル領域
 ①−1 アプリケーション系
 ①−2 インフラ系
 ①−3 運用系

②会社の役割
 ②−1 事業会社のIT部門(社内SE)
 ②−2 ユーザー系IT企業
 ②−3 Sier

③仕事の役割
 ③−1 システム企画
 ③−2 システム開発
 ③−3 運用保守