社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

ITエンジニアの分類(会社による違い:ユーザー系IT企業)

ITエンジニアを会社による違いで分類すると、事業会社のIT部門(社内SE)、ユーザー系IT企業、Sierに分類できます(私はユーザー系IT企業から社内SEに転職)。

ユーザー系IT企業の仕事内容は、事業会社のIT部門とSierの2つの顔を持ちます。

①事業会社のIT部門の顔

ユーザー系IT企業は、親会社である事業会社のIT部門が前身であるため、事業会社の業務を熟知していることが期待され、また自分たちもそのことを自分たちのアイデンティティーと考えています。IT企業の中ではもっともユーザー部門に近い立場にいます。

日々の問合せ等を直接ユーザー部門から受けることも多いため、親会社のIT部門よりも業務に詳しいこともあり、業務に詳しくなったエンジニアはユーザー部門からの信頼が厚くなり、親会社のIT部門よりも立場が強くなることもあります。

ユーザー部門や親会社のIT部門と信頼関係が構築できていると、要求定義だけでなくシステム企画にも携わることもできます。発注者としてSierにも強い発言力を持つことができ、非常にやりがいを感じることが出来ます。

Sierとしての顔

ユーザー系IT企業は、IT企業なのでSierとしての顔も持ちます。ITのプロフェッショナルとして、親会社に最適なシステムの提案をすることを求められます。開発中もプロジェクト管理を行い、QCD(品質、コスト、納期)と顧客満足の達成が課せられ、心身共に大きな負担があるのと同時に、無事にリリースできた時には大きな達成感を味わうことができます。

ITの知識が深いとSierからも一目置かれ、ユーザー部門からの難易度の高い要求に対しても、Sierの協力を得やすくなります。

ユーザー系IT企業の良い点と悪い点

以上、良いことづくしのようですが、当然、ユーザー系IT企業にも良い点と悪い点があります。

a.グループ内での立場

ユーザー部門に一番近い立場なので、信頼されると非常にやりがいを感じます。

システムの不具合も大目に見てもらえます。要件定義での調整もスムーズにできます。システムは使う人がヒエラルキーの頂点にいるので、ユーザー部門との関係が良好だと、親会社のIT部門よりも立場が強くなります。Sierからも一目置かれます。

その反面、ユーザー部門からの信頼を得られないと、Sierからは見下され、親会社のIT部門からは存在価値を否定されてしまいます。

相手の立場に立って相手の言葉で会話できるスキルや共感力、相手の話しを体系立てて理解する能力が必要となります。システム用語で話したり、論理的思考能力が弱いと、ユーザー部門からの信頼を得にくい場合が多いです。

b.成長性

ユーザー系IT部門は、下流工程よりも上流工程に力を入れています。業務を理解しているという利点から上流工程に強みがあります。通常は社員数が数百名のため、人数を多く必要とする下流工程は外注します。開発プロジェクトでは、ベンダーコントロールや設計書等のレビュースキルが求められます。

自分たちで作ることが少ない分、Sierよりも数多くの設計書やテストケースに触れる機会があり、その分、経験を多く積むことができます。障害の原因調査もSierからの報告を受ける立場なので、ここでもSierよりも多くの経験を積むことができます。きちんとしたレビュースキルがあれば、Sierよりも広く、深く、早く成長することができます。成長に通じにくい地道な部分をSierに任せて、自分たちはいいとこ取りをするので、生半可なSierよりも技術的な知識も豊富になります。

その反面、経験の浅い若手は成長に苦労します。開発プロジェクトでもレビュースキルが低いため、得てして事務系の役割(会議招集や成果物の管理、期限超過の回答の催促等)をすることが多くなり、伸び悩みます。Sierから転職してきた人も、Sierに指示をして仕事を回すという立ち位置に慣れずに悩みます。自ら課題を見つけて解決していく能力が不足している人は、何をしていいのか、何をやっているのか悩むことになります。

内製化に力を入れ、実装スキルを身につけていく会社もありますが、物を作る能力はやはりSierには敵わないので、中途半端になる可能性が高いです。

 c.ワークライフバランス

ユーザー系IT企業の仕事は、開発よりも保守の方が多いです。一つの事業会社(あるいはそのグループ)の仕事しかしないので、常に新しい仕事があるわけではありません。そのため1年間ずっと保守しかしていない、という状態もありえます。そして基本的に保守は常にあるので、開発プロジェクトに入りながら保守も兼務するという状態になります。10億円を超えるくらいのプロジェクトだと専任になりますが、そのようなプロジェクトはそれほど多くなく、さらに自分が携われる機会は生涯で5回もあれば非常に恵まれている方です。

ITエンジニアにとって保守はとても勉強になります。保守経験の無いエンジニアは、システムを作ることはできても、喜ばれるシステムを作ることはできません。自分の携わったシステムの保守を経験することで、ユーザーにとって使い勝手の良いシステムとはどのようなものなのかが分かります。使い勝手が良く、保守性が良く(改修しやすい)、安定稼働するシステムを作るためには、長年の保守経験が必須です。

保守はとても重要ですが、クリティカルな障害に対しては24時間365日対応することが求められます。深夜であっても休日であっても障害は発生します。酷いときには深夜3時や4時に毎日起こされることもあります。常に枕元に携帯電話を置いておく生活になります。慣れれば気にならなくなりますが、保守しなくて良い立場になると、とても解放感を感じるので、多少なりともストレスにはなっているはずです。

Sierのエンジニアであれば、失敗をしても別のお客さんのところに行けば、やり直しがききます。でもユーザー系IT企業のエンジニアは逃げ場がないため、非常に強いプレッシャーの中で日々の仕事をしていくことになります。その反面、Sierや社内SEよりも上流工程のスキルを身につけやすいので、上流工程が好きな人には、とてもやりがいがあると思います。

【振り返り】

②−2について、少し詳しくご説明しましたが、イメージが湧いたでしょうか?

次回は②−3について詳しくご紹介していきたいと思います。

①スキル領域
 ①−1 アプリケーション系
 ①−2 インフラ系
 ①−3 運用系

②会社の役割
 ②−1 事業会社のIT部門(社内SE)
 ②−2 ユーザー系IT企業
 ②−3 Sier

③仕事の役割
 ③−1 システム企画
 ③−2 システム開発
 ③−3 運用保守