社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

非機能要件(移行)

非機能要件の中の移行の説明です。

移行には、プログラム資産の移行やデータ資産の移行、教育が含まれますが、ここではプログラム資産の移行は特筆するようなことが無いため、説明の対象外とします。

1.データ移行対象

旧システムで管理しているデータを一覧化し、全てのデータについて移行の有無を明確にします。

またレコード件数や更新頻度の情報も一覧化することで、移行作業のボリュームが分かるようにします。

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2.データ移行スケジュール

移行のタイムスケジュールは、移行設計等で決めていくことになりますが、要求定義や要件定義の段階では、移行によるサービス停止がどれくらい許容できるかを明確にします。

例えば深夜1:00-5:00ならサービス停止可能とか、日曜日だけなら終日サービス停止可能とか、土日を含めた3日間サービス停止可能とかです。

サービス停止の時間をどれくらい許容できるかによって移行にかける費用が変わってきます。

リアルタイムで更新するデータが大量で、サービス停止もほとんど出来ない場合、新システムを並行で稼働させて、トランザクションを旧と新の両方で処理させるような移行の仕組みが必要になってきたりします。

逆に土日の2日間サービスを止められるのであれば、データを外付けHDDに落として新サーバーに移行したり、ネットワーク経由で移行したりといったオーソドックスで安価な移行方式を選ぶことができます。

また繁忙期にも注意する必要があります。

通常はサービス停止が許容できても、繁忙期は止められないような場合があります。一つの会社でもシステムによって繁忙期が異なります。会計システムであれば、毎月の締めのタイミングや決算月が繁忙期になりますし、人事システムであれば期末期初、小売の業務システムであれば中元、歳暮、クリアランス等の時期といったように、同じ会社でもシステム(を利用する部門)によって繁忙期が変わります。

3.移行方法

外付けHDDを使用しての移行、新旧のサーバー間でDISKを共有しての移行、ネットワークを使用しての移行、など旧サーバーと新サーバーがどのように接続できるかによって、移行方法が自ずと決まってきます。

外付けHDDの場合には、移動を含めた現地の人の動きが重要になってきますし、ネットワークを使用する場合、総量が同じデータ量でも伝送するファイルの数によって通信速度が極端に変わるので、その辺りの通信時間の見積りが重要になってきます。

またコンティンジェンシープランも外付けHDDだと故障や紛失、ネットワークだとネットワーク障害など、注意する点が異なります。

どのような移行方法にするのかによって、移行作業のボリュームが大きく変わります。

4.移行リハーサル

移行リハーサルの実施有無もあらかじめ明確にしておきます。

移行リハーサルの実施有無は、請け負ったベンダーが品質をどのように担保するかという問題なので、要求や要件として提示する必要がないという考え方もありますが、残念ながら何も考えずに移行リハーサルの想定をしていない移行経験の浅いベンダーが少なくないのが現状です。

移行リハーサルを行う時期も明確にしておきます。

本番直前だと、リハーサルで問題が出た場合に対処をする期間がありませんし、早すぎるとそもそも環境が整っていない状況になります。プロジェクトの規模にもよりますが、本番の2ヶ月前に1回目のリハーサルを実施することが多いです。

また移行リハーサルで利用するデータも、本番データを利用できるのか、自分たちでデータを作らないといけないのかも明確にします。本番データを利用する場合、自社のセキュリティー系のルールの確認も必要になります。

5.研修

教育や研修について、要求定義の段階で役割分担を明確にします。

誰が教育や研修を実施するのか、対象者の1回の人数や時間、実施回数、実施時期、研修内容の種類(一般向け、管理者向け等)、研修場所は誰が用意するのか、教育や研修に必要な設備(PCやプロジェクター等)や教材は誰が用意するのか、研修の成果はどのように確認するのか(アンケートや試験等)といったことを、ユーザーの主幹部門、システム部門、ベンダー等で役割の漏れがないように確認をします。

研修内容を撮影し、受講していないユーザーに動画で提供をするような要件がある場合もあります。

また環境についても注意が必要です。研修場所によっては本場環境にしか接続できない場合もあります。その場合、事前移行と研修が重なり、事前移行に制約が出ることがあります。研修後、数週間は研修環境を自分たちで自由に使いたいという要件がある場合もあります。

研修を本番環境で実施する場合には、研修後のデータの扱い(基本的にはクリアーすることになる)も明確にしておきます。

6.初期セットアップ

移行や研修の中に含める場合もありますが、研修を本番環境で実施する場合、初期セットアップとして管理を独立させておくと便利です。

ポイントとなるのは、ユーザーマスターや組織マスター、そして権限関係です。

研修の時にこれらを初期セットアップし、本番前日に再度、セットアップし直すのか、あるいは権限だけを本番1週間前にセットアップし直して、事前に権限設定してもらうのか、あるいは研修の時にセットアップして、そのまま本番をむかえるのか、など、いろいろなパターンがあります。

このように初期セットアップは、移行や研修とタイミングが異なる場合が多いので、独立して管理することで、タイミングの洗い出し漏れを防ぐことができます。

【振り返り】

移行の説明は以上で終了となります。次回はセキュリティの説明をしていきたいと思います。

①可用性
②性能
③拡張性
④運用保守
⑤移行
⑥セキュリティ
⑦ユーザービリティ/アクセシビリティ
⑧システム環境