社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

プロジェクト管理のキモ(コスト管理)

プロジェクト管理の中のコスト管理の説明です。

私はユーザー系IT企業を経て社内SEになったので、Sierでの経験がありません。ユーザー系IT企業も社内SEもコスト管理は乱暴ないい方をしてしまうと「ザル」です。SierのPMに良く聞かされたのは、コスト管理は本当に大変で、これだけで胃が痛くなるという話しです。が、ユーザー系IT企業時代も今もコスト管理は、負担に感じたことはありませんでした。

なぜか?自分たちのコストは変動が少ないからです。リスクの大部分は請負契約でSierに外注してしまうので、きちんと管理しなければいけないほど、コストの変動が少ないからです。基本的にはプロジェクトメンバーを増員でもしない限り、残業が増えた程度では予算超過することはありません。

コスト管理で重要なのは、予算と実績の管理ではなく、コスト管理の前の見積りです。見積りがいい加減だと、まともなコスト管理ができません。そのため、ここでは見積りについて詳しく触れていきたいと思います。ちなみにPMBOKのコスト管理には、見積りも含まれますが、通常、プロジェクト管理はプロジェクトがはじまってからの活動を対象にしているので、見積り時の活動もプロジェクト管理に含まれるPMBOKの考え方には、違和感があります。

1.見積り手法

いかに正確に見積りをするか、ということは世の中のITエンジニア共通の悩みです。そしてその悩みが解消していないということは、すっきりする見積りの手法なんてないということです。無いものを探すことほど、辛い仕事はありません。

見積り手法で有名なのは、ファンクションポイント法(FP法)です。FP法の対極にあたるのが類推法です。他にもWBS法とかユースケースポイント法とか、いろいろな手法があります。このように様々な見積り手法がありますが、実はどの見積り手法も最小単位のパラメータ値やタスクの根拠は、過去の経験や実績から設定するため、見積りは全て類推法と呼んでも過言ではありません。

実際にFP法を採用しているSierもFP法と並行して類推法で見積りをしています。両者の見積りに差が出た項目は、基本は類推法の見積りを採用している場合が多いです。

類推法は、過去の経験や実績をもとに工数を算出するため、個人のスキルに依存しがちなのは事実ですが、そもそも信頼できないスキルの人であれば、プロジェクト自体を任せてはいけないのです。プロジェクトを任せて見積りをさせる以上は、その人を信頼しなければいけません。

類推法には、過去に類似システムの開発経験がない新規システムの見積りができない欠点があると言われていますが、そもそもそのようなシステムは、FP法でも他の手法でもまともな見積りなんてできません。いかに適切なリスクを乗せるかという判断が全てになります。機械的に適切な見積りができるという幻想を抱く人が意外と多いことに、驚かされます。

2.見積りの標準化

類推法でもFP法でも、見積りスキルの低い人の見積りは精度が低く実績と乖離しがちですし、見積りスキルが高い人は、どんな見積り手法でも高い精度の見積りをすることができます。

組織として重要なことは、どの見積り手法を採用するかというより、見積り項目の標準化です。見積り手法は負荷にならない程度のものでとどめ、力を入れるべきは見積り項目の標準化です。

見積もりの内訳を標準化することで、見積り漏れを防ぐことができます。また他のプロジェクトと比較することで、今回のプロジェクトの特徴を知ることもできます。

見積りの項目を細かくし過ぎると、木を見て森を見ず状態になって見積り項目の漏れに気づかなくなりますし、粗過ぎてもやはり漏れに気づきにくくなります。

感覚的には各項目の見積り工数が1から5人月くらい、最小でも0.5人月、最大でも10人月になる粒度が適切かと思います。0.5人月以下の見積りだと、積み上げた時のぶれ幅が大きくなりますし、10人月以上の見積りだと作業ボリュームを具体的にイメージすることが難しいからです。

【振り返り

今回はプロジェクト管理の中のコスト管理の説明でした。次回は要員管理の説明をしていきたいと思います。

①.進捗管理
②.品質管理
③.コスト管理
④.課題管理
⑤.リスク管理
⑥.変更管理
⑦.コミュニケーション管理
⑧.成果物管理(文書管理)
⑨.要員管理
⑩.ステークホルダー管理
⑪.外注管理