社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

システム運用(構成管理)

システム運用の構成管理の説明です。

構成管理の対象はハードウェアやネットワーク、ソフトウェア、ライセンス、契約情報、業務アプリケーション、設計書など広範囲に渡ります。真面目にやると結構大変です。

1.構成管理の目的

構成管理の主な目的は、以下になります。

①IT資産の可視化

②インシデント発生時に影響範囲を特定するために活用

③ネットワーク構成やシステムなどの変更時に、影響範囲を特定するために活用

④過去の変更履歴の把握

例えば、とあるOSのとあるバージョンで重大なセキュリティーホールが見つかった場合、どのサーバーのどのシステムに影響するのか?といったことを構成管理を行うことで、迅速に把握することができるようになります。

またDISKがクラッシュした場合、影響のあるシステムも迅速に把握することができます。

IPアドレスの重複も発生しなくなります。

ライセンスが切れて、システムが停止してしまい、慌ててライセンス更新するなんてこともなくなります。

構成管理をやると、いいことずくめですが・・・ 

2.構成管理は大変

構成管理の対象は膨大にあります。

構成管理という名称から整った情報の管理をイメージしますが、数も膨大なら種類も膨大、管理する項目もその種類ごとに異なり、一つの項目でも複数の情報があったりするという、実態の管理はかなりドロドロです。

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構成管理とIT資産管理を分ける考え方もあります。

構成管理はあくまでも「構成」を管理し、シリアル番号などの「個々の機器」の管理はIT資産管理という考えです。

どちらの考えでも、管理することには変わりないので、重要なことは管理の目的です。

どんな目的で管理するのかが決まれば、自ずと管理する対象と管理方法が決まります。

3.構成管理の実態

構成管理は、きちんと管理していると非常に便利ですが、管理そのものに大変な負荷がかかります。管理する情報が多ければ、最新状態に保つために様々な変更プロセスを一元化する必要があるからです。

例えば、あるシステムに接続されているクライアントの情報が知りたいケースがあったとします。

PC接続だけかモバイル端末の接続があるのか、PCやモバイル端末のOSやブラウザーのバージョン、PCやモバイル端末の画面解像度、PCやモバイル端末の機種、PCやモバイル端末にインストールされているソフトウェア、接続するネットワーク、BYODの有無。いろいろな情報があります。

細かく管理すればするほど、PC1台購入した場合の構成管理への登録作業が膨大になっていきます。

そのためシステム一覧やサーバー一覧はあるけど、どのサーバーでどのシステムが稼働しているのか分からない、クライアント端末一覧はあるけど、個々のクライアント端末でどのシステムが利用されているのか分からない、といった状態が多いのが実態です。

4.悲しい先祖返り

構成管理とは別管理と考えられることが多いですが、開発部門での構成管理といえばソースコードや設計書のバージョン管理です。

そしてバージョン管理につきものなのがデグレードの一種である先祖返りです。

開発に携わる人であれば、誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

本番日の異なる改修を並行して実施した場合に起きがちに思えますが、実際に多いのは一つの改修(一つのプロジェクト)での先祖返りです。

テスト中にバグが見つかって修正をしたはずが先祖返りしてしまった、設計書を修正したはずが先祖返りしてしまった、といったケースです。

過密なスケジュールの中で、複数人で同一ソースや設計書を修正した場合に、一番発生しやすいです。

そして一番悲しいのは運用保守フェーズに入って、ある改修をした後、バージョン管理ツールにチェックインが漏れていて、次の改修で先祖返りしてしまうケースです。

チェックインを忘れてしまった、チェックインがされているかのチェックが漏れていた(実際には形骸化していた)という非常に人間的な誰でも起こりうるミスは、実は対策の打ちようがありません。

高いツールを導入して、立派なプロセスを作っても、それを運用するのが生身の人間なので、必ずミスは発生します。それが発生しないのは、メンバー一人ひとりのモチベーションが高いからです。

管理者はリリースの度に、先祖返りが起きないことの奇跡に感謝をしています。

構成管理で一番重要なことは、プロセスやツールよりも、常に最新状態に保とうというメンバー一人ひとりのモチベーションです。

そのモチベーションが萎えるような膨大な情報の管理は、百害あって一利無し。身の丈にあった管理をすることが重要です。

【振り返り】

構成管理の説明は以上で終了となります。次回は変更管理の説明をしていきたいと思います。

①インシデント管理
②問題管理
③構成管理
④変更管理
⑤リリース管理
⑥サービスデスク
⑦サービスレベル管理
⑧キャパシティ管理
⑨可用性管理
⑩ITサービス財務管理
⑪ITサービス継続性管理