社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

開発工程(戦略・企画)

開発工程の中の戦略・企画の説明です。

1.IT戦略

IT戦略は基本的にはCIOの仕事です。

企業がITをどうやってビジネスに活用していくかを中長期的な視点で策定し、必要な予算を確保します。

最近ではDXなどが話題になっていますが、企業のITを今後、どのようにビジネスに活かしていくのか?そのために必要なことは何なのか?一番重要な人材の確保や育成はどうしていくか ?セキュリティーコンプライアンスは?そのための予算は?投資対効果は?といったことを策定していきます。

老朽化したシステムを刷新するロードマップを作るのもIT戦略です。サーバー環境はオンプレからクラウドに移行し、最大限パッケージを活用して業務をパッケージにあわせ、ビジネス環境の変化に低コストで柔軟に速やかに対応していくことができるシステムにしていく計画を作ったりします。

IT部門が会社の組織のどこに位置づけられているかで、その会社でのITの位置づけが分かります。

社長直下に位置づけられていたら、それはCIOの立場が強いということです。でも例えば経営戦略室とかの下に位置づけられていると、CIOと社長の間にもう一人役員(経営戦略室長)がいるということになるので、思うようにIT戦略が描けない可能性があります。

2.システム企画

新しいビジネスを発掘するようなシステム企画ができるといいのですが、実際にはそのようなケースは稀です。

システム企画の大多数は、今できていないことの実現です。

こんなことができたらいいな、と思ったことを具体化していくことがシステム企画です。セキュリティーの課題があれば課題解決の企画、システムが老朽化してくればリプレースの企画、クラウド移行によるコスト削減の企画、点在する顧客情報を一元管理する企画、手作業の業務のシステム化の企画、などなど。

大変なのは費用対効果や投資対効果です。

コスト削減や老朽化対応は比較的に難易度は低いですが、業務改善系は効果の算出が非常に難しいです。

名のある大企業でも、システム化できていない手作業が大量にあります。その大半は、この費用対効果のハードルに阻まれています。DXだとか言っている時代になっても、システム化されずにいる業務は意外と多いのです。

3.システム企画の例

紙で回付している稟議書のワークフロー化の企画を考えてみます。

手作業をシステム化すること、そのものに対して反対する人はいないので、目的とか背景といった情報は、さらっと企画書に記載する程度で大丈夫です。

重要なのは費用対効果です。

まずは複数のベンダーから見積りを受領します。通常は、企画の段階では中間の費用をターゲットとして、費用対効果を算出します。

まずは削減できる費用の項目を洗い出します。

・紙代や印刷代
・稟議書を綴じるファイルの費用
・稟議書の保管場所の費用
・稟議書の番号を発番・記録する時間
・稟議書を印刷する時間
・承認者が自席にいるか確認する時間
・稟議を承認者のところに持参する時間
・決裁された稟議書を保管する時間
・過去の稟議書を探す時間
・保管期限の切れた稟議書を廃棄する時間

これらの削減できる費用(効果)が、システム開発のイニシャルとランニングの合計を例えば3年で上回れば、3年後にシステム費用を回収できることになります。

ただ残念ながら回収できない場合が多いので、定性的なメリットも追加します。改ざん防止、紛失防止、意思決定の時間短縮などです。効果が少し下回るくらいなら、定性的な効果を加えることで、承認を得やすくなります。それでも駄目なら、システム開発の費用削減を検討していくことになります。

また費用対効果とは別に導入計画の概要も必要になります。全部署一斉なのかパイロットの部署で効果を測定してみるのか。パイロット運用する場合には、使い勝手の部分での改善要望をアプリケーションに取込むスケジュールや費用も考慮します。

そしてこられの企画には、当然、ユーザー部門の積極的な協力が欠かせません。効果の算出もユーザー部門のお墨付きが必要です。実際にそのシステムを使うユーザー部門に「ぜひ導入したい」と思ってもらえるかが、企画が通るかどうかの成否を左右します。

【振り返り】

今回は戦略・企画の説明でした。次回は要求定義の説明をしていきたいと思います。

①戦略・企画
②要求定義
③要件定義
④基本設計
⑤詳細設計
⑥製造
単体テスト
結合テスト
⑨総合テスト
⑩受入テスト