プロジェクト管理の中の成果物管理の説明です。
システム開発では、非常にたくさんのドキュメントを作成します。
要件定義書、基本設計書、詳細設計書、プログラムソースや設定ファイル、単体テスト仕様書、結合テスト仕様書、総合テスト仕様書、などなど。実際には基本設計書もビジネスロジックを記載する基本設計書本体以外に、画面設計書や画面遷移図、テーブル定義書やファイルレイアウト、これらが機能ごとに作られたりして、非常に大量のドキュメントが作られます。
成果物管理はこれら大量のドキュメントを、プロジェクトメンバーが常に「最新のものを」「迷うこと無く速やかに」参照できることを目的としています。
1.成果物一覧の作成と管理対象の決定
まずはプロジェクトでどのようなドキュメントを作るかを計画します。通常、プロジェクト開始前のRFPの段階である程度、納品物として定義をします。ベンダー決定後に、それを元に具体的なレベル(例えば目次や記載内容のサンプル等)で認識合わせを行い、何を作成して、何を成果物管理の対象とするかを決めます。
例えば要件定義工程では、もちろん要件定義書を作成しますが、その過程で様々な検討資料を作成します。それらの中間成果物も管理対象とするのか、管理対象とした場合でもバージョン管理までするのか、等を決めます。
管理をするにもコストがかかるので、必ずしもすべてのドキュメントを管理するのが良いとは言えません。身の丈にあった管理(落としどころ)を探る必要があります。
もちろん、計画時に決めたことを最後まで守る必要は無く、プロジェクト途中で管理対象を柔軟に変えていく必要もあります。
2.バージョン管理の方法と更新ルール
何を管理するかが決まったら、バージョン管理の方法と更新ルールを決めます。バージョン管理はツールを使う場合もあれば、EXCEL等で管理する場合もあります。
変更管理との連携も重要です。
基本設計完了後に、基本設計の変更が発生した場合、それは変更管理の対象となります。変更が承認された場合、基本設計書を修正することになりますが、これは成果物管理のバージョン管理の対象となります。変更管理と成果物管理、ドキュメントの変更履歴、それぞれに何を記載するのかを決めます。重要なことは、何のために、いつ、誰がそのドキュメントを更新したのか、が分かることです。
また更新ルールで重要なことは、更新したことをどのようにプロジェクトメンバーに伝えるかです。プロジェクトでありがちなのは、更新した情報が上手く伝わらず、古い情報で実装してしまった、というケースです。更新結果を周知するのは、変更管理の範疇でもありますが、具体的にどの成果物を更新したのか、という観点では成果物管理の対象でもあります。どちらかで更新時のルールが決めてあれば良いのですが、どちらでも決めていないと、せっかくドキュメントを最新化して、きっちり管理しても、最新版を誰も見ていなかった、という悲しい事態に陥ります。
3.成果物の格納場所、フォルダ名やファイル名のルール
見たい時に、速やかに目的のドキュメントを探せるようにすることも重要です。
作成した成果物をどこに格納するのか、ベンダーと共同で見れるようにするためには、クラウド等のサービスを利用するのがベストです。
予めフォルダー構成を決めておくことも重要です。フォルダーをゴミ箱状態にしないために、ある階層まではプロジェクト開始時点で作っておく必要があります。
ファイル名も統一したルールを作ります。ファイル名の長さも決めておいた方が良いです。人によっては文章のように長いファイル名を付ける人もいますが、ファイル名が長いと、画面でファイル名が全て表示されず、小さなストレスが溜まることがあります。またバージョンをファイル名にも入れるようにすると便利です。「○○設計書_V1.0.xlsx」とか「○○設計書_V2.3.xlsx」とかバージョンNoで管理する方法と、「○○設計書_20200112.xlsx」のように更新日で管理する方法があります。後者の方がいつ更新されたかが一目で分かるので、仮に最新化が漏れていた場合でも気づくことができるので、おすすめです。
4.文書管理番号のルール
会社で文書管理番号の発番ルールが決められている場合には、それに従います。もし会社としてのルールがない場合には、あえてプロジェクト独自でルールを決めて運用する必要はありません。私の経験上、文書管理番号を運用して、便利に感じたことはありません。特にプロジェクト独自で運用する場合、ベンダーが変わった場合など扱いが面倒になります。ベンダーによってはベンダーの社内ルールで発番する場合もあります。成果物にベンダーの文書管理番号が記載されることもあり、こだわる部分ではないですが、ちょっと邪魔です。
【振り返り】
今回はプロジェクト管理の中の成果物管理の説明でした。
プロジェクト管理の紹介は以上となります。
①.進捗管理
②.品質管理
③.コスト管理
④.課題管理
⑤.リスク管理
⑥.変更管理
⑦.コミュニケーション管理
⑧.成果物管理(文書管理)
⑨.要員管理
⑩.ステークホルダー管理
⑪.外注管理