社内SEになりました

社内SEは本当に楽なのか?ユーザー系IT企業とSierとの違いは?これからIT企業への就職や転職を考えている人むけに、ユーザー系IT企業から社内SEに40代で転職した筆者がITエンジニアの仕事内容やプロジェクト管理のノウハウ等をご紹介。

プロジェクト管理のキモ(外注管理)

プロジェクト管理の中の外注管理の説明です。

外注管理は調達管理とも呼ばれます。RFPや外注先の進捗管理等を対象とする考え方もありますが、RFPはプロジェクト開始前に位置づけることが多いですし、外注先の進捗管理は通常の進捗管理の対象になりますし、外注先とのコミュニケーションであれば、ステークホルダー管理やコミュニケーション管理が該当するので、純粋なプロジェクト開始後の外注管理となると、契約関連くらいしかありません。

もちろん契約もプロジェクトを進める上で重要ではありますが、ステークホルダー管理と同様にテクニカルな手法とは少し毛色が違います。

ちなみに官公庁系の場合、調達というものは非常に負担が大きいものです。民間企業の人たちには想像がつかないと思いますが、調達が終わる(=ベンダーが決まる)と燃え尽きてしまいます。ベンダー決定後はベンダーに丸投げしたくなるのも、やむを得ないくらいです。

参考までに、どんなものか私のいた前職の会社でご紹介をすると。

まず調達仕様書という民間企業で言うRFPに相当するものを作成します。RFPとの違いは調達仕様書は契約書の一つになることです。RFPにはベンダーの成果物に対しての拘束力はありませんが、調達仕様書は原則、記載されていることを実現できなければ契約違反となります。要件定義をやる前から実現することを決めるので、書き方の粒度は粗いですし、ベンダーもリスク費用をたっぷり乗せてきます。さらには運用保守の委託も含まれることが多いので、どんなシステムになるかも決まっていないのに、保守作業等の調達仕様書も書かなければいけません。発注者側もベンダーも両方不幸です。

民間企業であれば、RFPを出して、ベンダーから提案を受けて、ベンダーを決めて、要件定義をやって、基本設計以降の契約をして、リリースの1ヶ月くらい前に保守の契約をするような流れになります。なぜ官公庁系も同様な流れにできないかというと、調達に気が遠くなるような時間がかかるからです。契約を要件定義、基本設計以降、保守と分けてしまうと、気が遠くなるくらいプロジェクト期間が長くなってしまうのです。

まず調達仕様書の初版ができると、意見招請というものを実施します。政府資本が入っている会社は、公平性を保つためのルールがWTOや政府調達のルールで決まっています。官報で公示をして、調達仕様書に対しての意見を広く募ります。この公示期間は20日です。20日経つと意見提出が締め切られ、それまでに提出された意見に対して、回答を返します。意見を出すのはベンダーです。契約で揉めないように粒度の粗い記載を具体的に書くように求めたり、少しでも自分たちに有利になるように、「仕様書をこう変えて欲しい」といった意見を出したりします。その意見に対しての回答を社内の調達委員会というところに付議して、承認をもらった上で回答をします。必要であれば調達仕様書も修正します。

その後は調達審査会という似たような名前の会議で承認を受けて、経営会議で承認を受けて、取締役会で承認を受けて、ようやく官報に調達の公示を行います。この調達の公示は、WTO競争入札の総合評価方式というものだと50日くらいの期間があります。50日経って、入札の締め切りとなります。

その後はベンダーのプレゼンがあって、総合評価というものを行います。総合評価は民間企業のベンダー選定とほぼ同じですが、これも調達審査会が公平に評価しているかを審査します。総合評価が終わると入札があり、ベンダーが決まります。

1億円を超える調達の場合、調達仕様書を作成してからベンダーが決まるまで、8ヶ月くらいかかります。その間に作る資料も膨大です。公平にベンダーを選定しているということを証明するために、作った資料もいろいろな人たちにチェックされます。いわゆるお役所的なチェックで、非常にストレスが溜まります。

愚痴っぽくなってしまいましたが、官公庁系の場合には外注管理は結構重要だったりしますが、民間企業だと普通にやっていれば誰でもできる類いの管理かなと思います。

【振り返り】

今回はプロジェクト管理の中の外注管理の説明でした。次回はコミュニケーション管理の説明をしていきたいと思います。

①.進捗管理
②.品質管理
③.コスト管理
④.課題管理
⑤.リスク管理
⑥.変更管理
⑦.コミュニケーション管理
⑧.成果物管理(文書管理)
⑨.要員管理
⑩.ステークホルダー管理
⑪.外注管理